ゴー宣DOJO

BLOGブログ
笹幸恵
2015.6.21 15:53

非情という名の・・・

8月の道場のテーマ「戦中・戦後の倫理を問う」を拝見して、

ふと思い出した小説があります。

『メフェナーボウンのつどう道』(古処誠二著)です。

 

ビルマの兵站病院で看護婦をしていた女性が主人公で、

戦争末期、ラングーンからモールメンまでの

300キロの撤退行を描いています。

ひょんなことから病院関係者と離れて、

負傷兵を担架で運びながら

モールメンへ向かうことになった主人公。

衛生下士官、日本人とビルマ人の看護婦、

そして在留邦人などがそこに加わり、物語が展開していきます。

 

詳細は省きますが、私が印象に残ったことの一つに、

「非情という名の施し」という言葉があります。

負傷してやっとの思いで兵站病院に到着した兵士は、

看護婦に優しい言葉をかけられると、死ぬそうです。

気力だけでここまで持ちこたえてきて、

白衣の看護婦を見ると途端に安堵し、気が抜けてしまう。

その先には「死」しかありません。

だから幽鬼のような姿になった兵士を、看護婦は

心を鬼にして叱りとばさなければなりません。

「だらしない。それでも兵隊か」と。

笑顔を見せず、鉄面皮で勤務を続けざるを得ない

従軍看護婦たち。

それが、「非情という名の施し」です。

 

そればかりか、撤退行で負傷した人々を

無視していかなければなりません。

それは隊列を乱さないという点でも

大事なことでしたが、

負傷して置いていかれる者は、これ以上、

周りに迷惑を掛けたくないと思っている。

敵が近づいてきたら、2、3人を道連れにして

手榴弾で死んでやろうとはなから決めています。

彼らにとって、看護は心の負担であり、迷惑ですらある。

道ゆく者は、彼ら負傷兵を見捨てて先を急ぎます。

これも「非情という名の施し」です。

 

おそらく平和な日本では考えられないことでしょう。

非情であることが「施し」になるなどと、

平時の倫理観では到底理解できません。

「看護」という観点でいうならば、平時と戦時のそれは

180度異なると言ってもいい。

それほど「戦中の倫理」を考えることは難しい。

 

私はいつも、戦争経験者から話を聞くたび、

平時と戦時の倫理の違いを思い知らされます。

本能的に嫌悪を抱いてしまうこともあります。

そんなときは、理性が「ちょっと待て」といいます。

自分だったらどうしていたかを考えろ、と

脳みそから指令が来るのです。

嫌悪を抱くことの傲慢さに気づきます。

正直なところ、いつも、いつも、その繰り返し。


 「戦中・戦後の倫理を問う」

平成27年8月2日(日)午後1時 から
『人事労務会館』 にて開催します。

「人事労務会館」
(住所:東京都品川区大崎2-4-3 )は、
JR山手線・埼京線・湘南新宿ライン・りんかい線
『大崎駅』 の 北改札口 を出て左へ、
「西口」 側の左階段を降りて、徒歩3分です。

毎回、会場の場所が分からず迷われる方が、多くいらっしゃいます。

人事労務会館のHPにて、場所をよくご確認の上、ご来場下さい絵文字:重要
(HP掲載の、駅から会場までの地図を印刷し、持参されることをオススメします )

詳しくは、 “ こちら ” でどうぞ。

8月2日の「ゴー宣道場」は、

『戦中・戦後の倫理を問う』と題して開催します。


実は前回の道場では、戦争と道徳との関係性を
正面から論じ、
深く掘り下げてはいない。


テーマの追求よりも、ゲストの人柄や言葉の面白さや魅力が、

「ゴー宣道場」で炸裂することを楽しんで終わってしまった。

道徳は共同体で醸成されるものという認識から、現代社会の

共同体再構築の話に関心が移行してしまった。

 

そこで今度は共同体とは関係ない「倫理」を
戦争や植民地の
問題に結び付けて考えてみたい。


課題図書として

『慰安婦問題をこれで終わらせる』(松竹伸幸)

『沖縄戦 二十四歳の大隊長』(笹幸恵)

『卑怯者の島』(小林よしのり)

の3点を上げておく。

この3冊には、それぞれ戦場や植民地での倫理観が問われ、

まさに深掘りするためのヒントが隠されている。

著書で慰安婦問題の新たな解決手段を提案されている

松竹伸幸氏をゲストに迎える。


 

そして8月2日は、わしが司会をする。

ゲストに頼る回が続くと、門弟や参加者が単なる消費者に

堕してきて、「道場」の本分を忘れてしまう。


門弟たちの中には、もう師範の意見は分かるそうだから、

各自がどのくらい自分の言葉で語れるようになったのかを

試そうと思う。


もちろん、師範方にも、わしが質問して、
どこまで考えて
いるかを追求する。


ようするにわしの意図としては、
喝を入れる回にすると
いうことだ。

当日、道場の入場料は、お一人様1000円です。


参加ご希望の方は、このweb上の申し込みフォームから申し込み可能です
絵文字:重要絵文字:パソコン

上 ↑ のメニュー「道場参加申し込み」もしくは下 ↓ の申し込みフォームバナー(画像)
クリックして、申し込みページにお進み下さい絵文字:よろしくお願いします
入力必須項目にご記入の上、お申し込み下さい絵文字:重要絵文字:メール

お申し込み後、記入されたメールアドレス宛に「申し込み確認メール」が届きますので、
ご記入内容に間違いがないか、よくご確認下さい。

※「申し込み確認メール」が届かない方は、以下のような原因が考えられます。

・迷惑メール対策サービスを利用していて、「ゴー宣道場」からのメールが迷惑メールと判定されている
・着信拒否サービスを利用していて、「ゴー宣道場」からのメールが着信拒否の対象となっている
・ドメイン指定受信を利用していて、「gosen-dojo.com」のドメインが指定されていない
・セキュリティソフトやメールソフトで迷惑メール対策をしていて、 「ゴー宣道場」からのメールが迷惑メールと判定されている

reply@gosen-dojo.com」からのメールを受信できるよう再設定をお願い致します。

「申し込み確認メール」が届かない場合、当選メールも届かない可能性がありますので、
ご注意ください絵文字:重要


申し込み〆切後、当選された方にのみ「当選メール」を送らせて頂きます。

当選された方は、道場当日、
その「当選メール」をプリントアウトの上、会場までご持参下さい。

 道場参加申し込みフォーム

応募〆切 は 平成27年7/22(水) です。

当選通知の送付は、応募〆切後になりますので、しばらくお待ち下さい絵文字:よろしくお願いします

皆様からの多数のご応募、お待ちしております絵文字:重要絵文字:晴れ


 

笹幸恵

昭和49年、神奈川県生まれ。ジャーナリスト。大妻女子大学短期大学部卒業後、出版社の編集記者を経て、平成13年にフリーとなる。国内外の戦争遺跡巡りや、戦場となった地への慰霊巡拝などを続け、大東亜戦争をテーマにした記事や書籍を発表。現在は、戦友会である「全国ソロモン会」常任理事を務める。戦争経験者の講演会を中心とする近現代史研究会(PandA会)主宰。大妻女子大学非常勤講師。國學院大學大学院文学研究科博士前期課程修了(歴史学修士)。著書に『女ひとり玉砕の島を行く』(文藝春秋)、『「白紙召集」で散る-軍属たちのガダルカナル戦記』(新潮社)、『「日本男児」という生き方』(草思社)、『沖縄戦 二十四歳の大隊長』(学研パブリッシング)など。

次回の開催予定

第117回

第117回 令和6年 5/25 SAT
14:00~17:00

テーマ: ゴー宣DOJO in大阪「週刊文春を糾弾せよ!」

INFORMATIONお知らせ